証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

夜の森に在るBARで №8

~ BARで 東雲坂田鮫 ~

 

 

断片的に思い出して来たのは……

 

今目の前に居るバーテンダー

 

過去に何度も感じた

 

柔らかなくちあたりと息苦しさ……

 

表情や仕草……

 

温もりや匂い…………

 

そして……

 

言葉……………

 

 

だけどそれらが繋がることは無い……

 

でも……

 

繋がること無く

 

ずっと断片的なままなのに……

 

私は今何をすれば良いか……

 

それだけはすぐに解った……

 

 

というか…

 

知って居た…………

 

何もしなくて良い……

 

私が今しなければならないことと……

 

私が今したいこと…………

 

それは同じで

 

それは……

 

あの美術教師に拘束されることと似た幸福感が……

 

あらゆるものの隙間を埋めて

 

あらゆるものと自分との……

 

境界線を無くして行く…………

 

そんな感覚に

 

身を委ねるということだった…………

 

 

 

「貴女だけの為に

 たった今生まれたばかりの

 カクテルです……」

 

 

甘酸っぱい柑橘の香りとジュニパーベリー……

 

コリアンダー……

 

リコリスやアンジェリカ………

 

様々なハーブやスパイスが織りなす

 

小さな宇宙が……

 

私の手の中から

 

心へと浸潤して来る…………

 

 

透明な固いガラスにくちをつけ……

 

冷たい液体が

 

口内に流れ込み始めたとき………

 

今この瞬間

 

その冷たい液体以外の全てが

 

存在価値を

 

失って居た…………

 

これだけが良い…………

 

これだけで

 

全てが満たされて居る……………………

 

とても……

 

とても……

 

楽だ………………

 

 

小さな宇宙が

 

一滴残らず私の心に溶けた後……

 

何か魚を使った料理が食べたくて……

 

食べたくて食べたくて

 

たまらなくなって居た……

 

私は魚介類が大好きだということを思い出した………

 

はたして

 

また感じた息苦しさの後………

 

 

それは私の

 

目の前に現れた…………

 

顔を上げると

 

バーテンダーと目が合った……

 

 

魚と一緒にいただきたいものが

 

頭に浮んだ……

 

でも

 

それを伝える必要の無いことは

 

解って居た……

 

バーテンダーの肩の動きが

 

それを物語って居た……

 


いや……

 

仮に今私が

 

目を閉じて居たのだとしても……

 

なにも言葉にする必要の無いことは……

 

最初から……

 

解って居た…………

 

 

何かひとつサーヴィスされる度に

 

少し息苦しくなって

 

懐かしい感覚に包まれる……

 

目を開けると

 

バーカウンターの中へと戻って行くバーテンダー………

 

息苦しさと……

 

懐かしさ………………………………

 

         TO BE COMUGIKO

 

 

私の口紅…何回塗り直してもすぐまたとれちゃうんですけど…何か理由とか知ってます?

 

さあ…何でだろうね……私は全然知らないよ?

 

夜の森に在るBARで №6

~ 追憶 バーテンダー ~

 

 

コンビニオーナーの娘達が

 

まばたきを出来なくなったその目で

 

私を見て居た………

 

私は彼女たちを

 

とても愛おしく思った…………

 

 

妹は

 

ゆっくりと絞殺したので

 

骨に異常は無く…

 

姉は

 

そのつもりで前から抱きしめて

 

骨盤と肋骨にキズをつけないよう気を付けて

 

正確に背中側から肝臓を貫いたので

 

二人とも

 

燃やしてしまえば証拠は残らない………

 

 

そう思った……

 

 

本当は

 

ずっとこうしたかった………

 

今までこの姉妹を殺害せずに居たのは

 

バイトを継続したかったからだ…………

 

 

私には

 

ずっと欲しいものが在った……

 

それを手に入れる為には

 

沢山お金が必要だった…………

 

 

レジ付近の煙草置き場から

 

ech○を一箱取って

 

火をつけてから姉と妹の唇を開いて咥えさせ

 

軀に被せた仮眠用の毛布に燃え移り

 

炎が大きくなるのを見とどけてから

 

コンビニを後にした…………

 

本当は姉妹も

 

他の彼女達と同じように

 

アパートに連れ帰って

 

暫く一緒に暮らしたかった………

 

しかし

 

そのときの私は

 

ふたりを連れ帰る手段を

 

持ち合わせて居なかった…………

 

 

折角完璧に従順に

 

私好みの女になった姉妹だったが…………

 

そのときは

 

燃やす以外の方法が思いつかなかった…………

 

 

はじめは

 

遅刻して出勤したらコンビニが燃えて居た

 

 

そう言うつもりだったが………

 

もしも殺人か放火……

 

或いは

 

その両方を疑われた場合……

 

私のアパートを調べられるのは

 

当たり前だと思った……

 

 

アパートを調べられれば

 

仮にコンビニでの殺人と放火が誤魔化せたとしても

 

アパートに留守番させて居る

 

他の彼女達の骸に関しては

 

誤魔化しようが無い………

 

 

私は予定を変更して

 

暫くこの地を離れることにした………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

 

 

絞殺した妹の歯がピンク色に染まっていく様を見とどけられなかったのは今でも心残り……



 

夜の森に在るBARで №5

~ 追憶 バーテンダー ~



「今日はサボれば?」

 

 

私が言うと

 

 

返事はしなかったが彼女は

 

翌朝私がコンビニへ出勤するまで

 

ずっと傍に居た……

 

 

 

アパートを出るとき

 

前日手に入れた特殊警棒を

 

彼女が興味深げに見て居たので

 

彼女の手に握らせて

 

「これを必要として居るひとに

 プレゼントしてあげるといい」

 

 

そう言って

 

私はコンビニへ歩き出した……

 

何となく

 

彼女とは暫く逢えなくなるような予感がしたが

 

それはそれで構わないと思い

 

一度も振り返らずにコンビニまでの道を歩いた…………

 

 

コンビニに着くと

 

オーナーの娘に告白された……

 

今更…

 

ということと

 

こんな早朝に…

 

ということ

 

そのどちらか

 

或いは

 

その両方に突っ込みを入れたくなったが……

 

とりあえずいつものように

 

監視カメラの無いスタッフルームに連れていって

 

いつもと同じ

 

ことをした……

 

 

さっきアパートで

 

 

あの女の首に触れて居たにも関わらず

 

力を入れなかった反動だろう………

 

オーナーの娘の首を絞める力が

 

いつもより強かったらしく……

 

彼女が

 

呼吸して居ないことに気付いた………

 

商品在庫のストックルームから

 

乱れた呼吸音が聞こえた……

 

彼女の姉が

 

いつもそこに隠れて覗いて居たことは

 

ずっと前から知って居たが……

 

面白いのでうっちゃって居たのが仇になった………

 

 



 

血の付いたペティナイフを見ながら長い息を吐いて

 

アパートを出るときに

 

なんとなく感じた予感は

 

これだったのか………

 

 

そう思って居た………………………

 

        TO BE COMUGIKO

 

本当はアパートに連れ帰りたいんだけど…今日はちょっと無理なんだ………



送迎の人がくれたもの №9

~ 追憶 津葦キリコ ~

 

 

いつものように仕事の時間より早く待ち合わせして

 

今…

 

送迎の人と車の中………

 

 

私が上になって居て…

 

送迎の人に

 

「目を閉じて」

 

 

 

言った……

 

送迎の人は目を閉じてから

 

「終わってからじゃダメかなぁ……」

 

 

目を閉じた自分の額に

 

ゆっくりと動き続けながら銃口を向けて居る私に言った………

 

 

「にげたりとか……」

 

 

私……

 

「絶対に捕まるよ」

 

 

送迎の人……

 

「そうだよね………」

 

一旦トカレフダッシュボードに入れた…………

 

 

 

 

 

 

「おなかの中にプレゼント入れといたよ」

 

「…………ごめん…………

 私…ピル……呑んでるから…………」

 

「違うよ…

 そんなの嬉しく無いだろ……」

 

「……そうだけど…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「バイバイ……」

 

「…………」

 

「早くしろって………」

 

「……………………うん………」

 

送迎の人の額に……

 

銃口を向けた…………

 

私は

 

私の人差し指に願う……

 

この人を……

 

殺さないで

 

と…………

 

 



 

滲んでぐにゃぐにゃにぼやけた世界の中

 

手探りでダッシュボードを開けて

 

実弾七発が残って居るトカレフを入れた……

 

車から降りてすぐ嘔吐した……

 

会社に電話して

 

「終わりました」

 

と伝えた……

 

電話を切って五分も経たないうちに到着した会社の人間が

 

「部長から渡すよう頼まれました

 今夜はよく眠ってください」 

 

と言って

 

犬のコックさんがプリントされた

 

トートバッグを差し出す……

 

中を覗いたら

 

ハルシオンとシップスミスのV.J.O.Pが入って居た……

 

私まだ未成年なんですけど……

 

なんて冗談を言えるような余裕は無かった…………

 

家まで送ると言われたが

 

断って今

 

暗い道を独りで歩いて居る…………

 

 

さっきからずっと違和感を感じて居た……

 

ゆびをいれてプレゼントを取り出す……

 

耳栓だった…………

 

トカレフダッシュボードの中へ置いてきた…………

 

うろ覚えだから違うかも知れないけれど……

 

オー・ヘンリーの代表作でThe Gift of the Magiっていう短編小説は

 

たしかこんな話だったかな……

 

 

そう思った…………

 

でもたしかThe Gift of the Magiはハッピーエンドだったはずだけど…………

 

ひとくちだけ残って居たシップスミスで

 

ハルシオン5錠全部呑み下してから

 

空になったボトルを

 

静かな交番に投げ込んだ……………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

 

翌日出勤したら会社からガバメントが支給されたけど
私はこれからお薬を使ったお片付けにシフトするつもりだったので
とりあえず引き出しの奥へしまっておいた

 

送迎の人がくれたもの №8

~ 追憶 津葦キリコ ~

 

 

お片付けの仕事は

 

どうやら私に合って居るらしい……

 

 

上の期待に応えられなかったのは

 

女に自殺されたあの一回だけで

 

それ以降は

 

上からの要求以上に成果を上げ続け

 

今はかなり重要なお片付けも任されるようになった………

 

 

お金の面ではもうスプリング販売の必要は無い……

 

けれど私は…

 

今週三くらいで

 

その仕事も入れて居る……

 

その仕事で……

 

と言ったほうが良いか……

 

私には

 

送迎の人と逢うための口実が必要だった………

 

 

スプリング販売の日は

 

いつも早めに待ち合わせして

 

そういう感じになる……

 

お客さんを

 

絶対に待たせてはいけないという

 

プロ意識が建前だ……

 

いつもそういう感じなので

 

お客さんの前に出るときは

 

当然ながら

 

そういう感じ………

 

 

なって居るのだけれど……

 

仕事の前は

 

基本的にシャワーを浴びるので問題は無い……

 

偶にシャワーを浴びさせてくれないお客さんも居るが……

 

「どういうこと?」

 

と問われれば

 

「そういうこと……」

 

と言って

 

曖昧に目を見る……

 

 

そういう……

 

という言葉はとても便利で

 

例えば…

 

同じでは無いけれど

 

「ごっつぁんです」

 

に似て居るかもしれない……

 

万能な言葉?……

 

嘘をついて居る訳では無いのに

 

特にリピーターのお客さんなどは

 

結果的に喜び

 

色々な手間も省け

 

チップも多めに貰えたり……

 

正直

 

良いことしか無いと

 

認識して居る……

 

 

送迎の人の様子がおかしいことに気が付いたのは最近だった………

 

というのは嘘だ……

 

そういうことを

 

直球でくちにするのは

 

なんとなく気が引けて……

 

いつも

 

自分で気付いてくれないかと………

 

そんな空気を出してはみるのだけれど…………

 

例えば……

 

「凄い汗だね」

 

とか…………

 

でも……

 

「最近暑いからね」

 

とか言って……

 

誤魔化される………

 

「こないだ逢ったときも……

 袖のボタンとれてなかった?……」

 

とか……

 

「なんか最近……

 声高くない?……」

 

とか………………

 

でも

 

何を言っても

 

結局いつも全部てきとうに誤魔化される…………

 

 

そんなある日

 

上司から渡されたリストには……

 

送迎の人が載って居た…………

 

 

想定して居たことなので

 

驚きはゼロ……

 

むしろ遅かったな

 

という印象…………

 

それでも私の心は……

 

一気に…土の中…………

 

といった感じだった…………

 

いつもは何も言わない上司が

 

今回に限って一言添えた……

 

「売りもんに手ぇ付けすぎたんだよ」

 

もっと早い段階で私が

 

直球で

 

「シャブ止めろ」

 

って言ってたとしたら……

 

今の

 

この状況は回避出来て居たのだろうか…………

 

 

それとも

 

売りもんには私も含まれて居るだろうし

 

会社が気付いて居ない訳も無いので

 

結局はこうなって居たのだろうか…………

 

人間とは無駄なことを考える生き物で在る…………

 

私が今夜

 

送迎の人を殺害するという未来は

 

既に確定して居るというのに…………………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

 

夜の森に在るBARで №4

~ BARで 東雲坂田鮫~

 

 

懐かしい香りと息苦しさがとても心地良かったので

 

暫く目を閉じて居た………

 

 

ふと

 

息苦しさが無くなったので

 

目を開けてみると……

 

 

目の前に

 

一粒の胡桃が在った……

 

 

「店の裏に胡桃の木が在るんです」

 

 

そう言って

 

私に近付いてくるバーテンダー………

 

 

好きな味だった……

 

柔らかなくちあたりと

 

舌に吸い付く感じが……

 

過去の記憶を呼び起こす…………

 

 

ただ…

 

いつ……

 

何処で……………

 

そこまでは思い出すことが出来ない…………

 

でも……

 

 

このバーテンダーの目には

 

 

見覚えが在る…………

 

 

この目を見て居ると……

 

私は

 

何もしなくても良いのだと思う…………

 

唯々軀の力を抜き……

 

楽にして居れば良い…………

 

 

そうしたい……

 

そして…………

 


そうしなければならないのだとも思う………………

 

 

そうしたいとそうしなければならないが

 

同一だったとき……

 

そこには一塵の苦痛も無く……

 

それは唯々楽な環境下で

 

辺り一面の多幸感が

 

 

私の全てを包み込んで行く………………

 

 

断片的にひとつ……

 

またひとつと…………

 

私は何かを

 

思い出して居た…………………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

鬼胡桃って…素手で割れます?

 

夜の森に在るBARで №3

~ 追憶  バーテンダー ~

 

 

彼女と初めて出会ったのは

 

その時よりも

 

もっと前だった……

 

 

彼女を一目見て気に入った私は

 

森の中に捨てられて居た車の中で

 

長い時間を

 

一緒に過ごして居た………

 

その時の彼女も

 

何の抵抗も示さず

 

唯々従順だった………

 

何度かそういうことが在って…

 

その後暫く彼女を見かけなくなったが……

 

それから何年か経ったある日

 

私がバイトして居た早朝のコンビニに

 

パンを買いに来た……

 

 

彼女は随分と生長して居た……

 

服を着て居なかったので

 

すぐに彼女だと解ったが

 

もしも服を着て居たとしても

 

遠くからでも解る

 

彼女の美しい淡い水色の左目を

 

 

私が忘れるはずなど無かった………

 

それから彼女は

 

頻繁に来店するようになった……

 

私は彼女を悲しい気持ちにさせたくなかったので

 

いつも彼女が手に取る銘柄の食パンを

 

必ず一斤キープしておくようになった……

 

食パンの代金を受け取るときは

 

毎回彼女のくちを塞いだ………

 

彼女はたぶん…

 

気付いて居なかったと思う……

 

その行為が

 

彼女の淡い水色を

 

くりぬいて仕舞いたいという衝動を抑える為の

 

代替行為で在ったということを………

 

 

警察官になりすまして連続暴行を働いて居たひとの首を

 

スコップでふたつに切り分けようとしたが

 

そのひとの首では無く

 

彼女の淡い水色を見ながらだった為

 

まだ皮一枚繋がって居た……

 

その日彼女は私のアパートに来た……

 

私のアパートには

 

私の恋人達が何人か居たが

 

彼女に気にする様子は

 

特に無かった……

 

 

私は

 

彼女の淡い水色を守る為

 

ずっと彼女のくちを塞いで居なければならなかった……

 

彼女はとても従順だった…

 

何も喋らず……

 

唯々私を見て居るか…

 

 

目を閉じて居るかのどちらかで……

 

初めて出会ったあの日から

 

何も変わって居なかった……

 

だから私は

 

彼女の首に触れて居る指に

 

力を入れる必要が無かった……

 

彼女は

 

死体よりも………

 

従順だった………………

 

 

              TO BE COMUGIKO