~ 追憶 津葦キリコ ~
いつものように仕事の時間より早く待ち合わせして
今…
送迎の人と車の中………
私が上になって居て…
送迎の人に
「目を閉じて」
と
言った……
送迎の人は目を閉じてから
「終わってからじゃダメかなぁ……」
と
目を閉じた自分の額に
ゆっくりと動き続けながら銃口を向けて居る私に言った………
「にげたりとか……」
と
私……
「絶対に捕まるよ」
と
送迎の人……
「そうだよね………」
「おなかの中にプレゼント入れといたよ」
「…………ごめん…………
私…ピル……呑んでるから…………」
「違うよ…
そんなの嬉しく無いだろ……」
「……そうだけど…………」
「…………」
「…………」
「バイバイ……」
「…………」
「早くしろって………」
「……………………うん………」
送迎の人の額に……
銃口を向けた…………
私は
私の人差し指に願う……
この人を……
殺さないで
と…………
滲んでぐにゃぐにゃにぼやけた世界の中
手探りでダッシュボードを開けて
実弾七発が残って居るトカレフを入れた……
車から降りてすぐ嘔吐した……
会社に電話して
「終わりました」
と伝えた……
電話を切って五分も経たないうちに到着した会社の人間が
「部長から渡すよう頼まれました
今夜はよく眠ってください」
と言って
犬のコックさんがプリントされた
トートバッグを差し出す……
中を覗いたら
ハルシオンとシップスミスのV.J.O.Pが入って居た……
私まだ未成年なんですけど……
なんて冗談を言えるような余裕は無かった…………
家まで送ると言われたが
断って今
暗い道を独りで歩いて居る…………
さっきからずっと違和感を感じて居た……
ゆびをいれてプレゼントを取り出す……
耳栓だった…………
うろ覚えだから違うかも知れないけれど……
オー・ヘンリーの代表作でThe Gift of the Magiっていう短編小説は
たしかこんな話だったかな……
と
そう思った…………
でもたしかThe Gift of the Magiはハッピーエンドだったはずだけど…………
ひとくちだけ残って居たシップスミスで
ハルシオン5錠全部呑み下してから
空になったボトルを
静かな交番に投げ込んだ……………………
TO BE COMUGIKO