証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

送迎の人がくれたもの №5

~ 追憶 産業医 津葦キリコ ~

 

 

施設長と会ったのは

 

本当の偶然では無いにせよ……

 

ばったりと

 

そういう感じでは在った…………

 

 

販売の部署に居た頃

 

送迎無しで単独仕事の日には

 

あえて施設の近くでお客さんをとって居た私……

 

もしかしたらいつか……

 

とは

 

もちろん思って居たのだけれど……

 

今夜をその時とする意思は

 

持って居なかった…………

 

私は部署異動してから

 

未だ一度もスプリングの仕事はして居らず

 

今夜は偶々

 

気晴らしのつもりで壁にもたれて居たのだ………

 

私に声を掛けてきた施設長は

 

私の顔など

 

もう……

 

忘れて居るらしかった…………

 

 

 

ホテルまでの道すがら

 

無言の施設長の足音を聞きながら

 

私が初めて殺害した

 

あの姉妹との

 

最後のやり取りを……

 

思い出す…………

 

 

姉は私に

 

「おねがい……

 わたしをころして………」

 

と言い

 

それに続いて妹は

 

「わたしも……」

 

とだけ言った…………

 

 

施設の壁は薄く

 

施設長が『そういう人間』であることは

 

皆が知って居たけれど

 

閉鎖的な施設の中で

 

それが異常だと思って居る者は

 

私を含めて一人も居ないのだと……

 

そう思って居た私は

 

思わず

 

「なんで?」

 

 

と言った………

 


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