~ 追憶 産業医 津葦キリコ ~
施設長は……
毎晩
顔立ちの整った女児達の中から何人かを選ぶのだが
あの姉妹は特にお気に入りだったらしく
その頻度は
他女児達との比にならなかった………
姉妹の泣き声や叫び声は
夜遅くまで止まないのが普通だった…………
これは
私達の日常で
当たり前の日々なはずだった…………
だけど…
そんな当たり前の日々は
姉妹にとって当たり前では無かったらしい…………
妹が
「わたしも」
と
言った後に
姉がラムネを出して……
「わたしたちをころしてくれるなら
ふたつぶ
あのひとに
このてがみをわたしてくれるなら
もうひとつぶ
あのひとが
いちねんごにまだいきていたばあい
ころしてくれるなら
ぜんぶあげる」
そう言った……
ラムネが好きだった私は
緑色のプラスチックボトルを受け取って
ラジカセの電源コードを
先ず妹の首に巻き
その後
姉の首に巻いた
「キリちゃんありがとう」
姉妹の最期の言葉は
同じだった……
施設長に渡して欲しいと頼まれた手紙には
あなたのことばをしんじています
と
それだけが書いて在った……
姉妹の願いのひとつ……
いちねんごに……
ん?
とは思ったがその時私はスルーして居た…………
私はこの姉妹に
少し
嫉妬して居た……
だからラジカセの電源コードには
躊躇いなく力を込めることが出来たし
施設長を殺害する気なんて
はじめから全く無かった……
この手紙を……
見るまでは………………
TO BE COMUGIKO