証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

夜の森に在るBARで №7

~ BARで バーテンダーと東雲坂田鮫アネモネ藤子 ~

 

 

 

彼女のくちを塞いだまま

 

彼女の軀を拭いて居た………

 

なんだか途轍も無い違和感に襲われた私は…

 

さっき収穫して味見した野菜の中に

 

別の意味の野菜でも混入して居たのだろうか……

 

 

本気で思った………

 

彼女の傷口を押さえると……

 

 

ナフキン

 

血だけではなく……

 

 

傷口自体も………

 

移動して行く…………

 

そんな映像が

 

私の頭に浮んだ…………

 

彼女が軀に纏った血と傷を……

 

ナフキンで拭い……

 

その白く美しい肌の面積が増えるのに比例して

 

彼女の意識もはっきりして来る…………

 

 

そんな妄想に

 

支配されそうになる自分が居る…………

 

 

しかし……

 

そんなことは在得ないのだ………

 

彼女は確かに致命傷を負って居た…………

 

 

帳は……

 

いつ降りてもおかしく無い状況だった………

 

 

彼女から

 

少し軀を離してみると……

 

ついさっきまで見えて居たはずの

 

肋骨や内臓の一部が……

 

何処にも見当たらない……………

 

ヤバい……

 

そう

 

思った…………

 

私は今

 

完全にトリップ中らしいと…………

 

そう……

 

思った…………

 

 

彼女の前に

 

なんとなく胡桃をひとつ置いて

 

 

血塗れのナフキン

 

ゴミ箱に入れた…………

 

心を落ち着かせる為に

 

カクテルを一杯つくろうと思った………

 

丁寧に洗った手を

 

スリーピースのシェイカーに伸ばしながら

 

視線を彼女に戻すと…

 

 

丁度彼女が目を開けて

 

 

胡桃を掴んだ所だった…………

 

 

「店の裏に胡桃の木が在るんです」

 

 

完全に

 

職業病だと思った……

 

 

如何なる状況下に於いても

 

私はひとりの

 

バーテンダーなのだ………

 

彼女の淡い水色が

 

こちらに向いた……

 

 

私は彼女に近付いて

 

 

もう一度

 

 

くちを塞いだ……

 

 

彼女の淡い水色を見て居たら……

 

もう……

 

どうでも良いと…………

 

急に……

 

そう……思えた…………

 

 

余計なことは一旦忘れて……

 

今ここに……

 

今この目の前に居る彼女に……

 

 

彼女だけに

 

集中しようと…………

 

そう…思った………

 

 

彼女の淡い水色を見ながら

 

 

私はシェイカーを振った……

 

 

たっぷり空気を含ませた液体をバルーングラスに注ぎ

 

ガーニッシュを飾った後で

 

 

ビターを抑えて

 

下からピールした……

 

今の彼女には

 

強めの香りが望ましいと思い

 

もう一度

 

ピールした………

 

 

「貴女だけの為に

 たった今生まれたばかりの

 カクテルです……」

 



              TO BE COMUGIKO

 

さっきのもとても美味しかったけれど…これも凄く美味しそう……