~ 追憶 酒森 ~
「カッターナイフなんかじゃダメよ?
刃渡りの長い包丁が良いわ……
包丁は必ずよく研いでおいてね………
持ち手に近い刃先をここに当てて
真横じゃ無くて
やや下向きに力を入れながら………
一気に引くのよ………
引いたら手首は決して見ずに
バケツに入れた水にすぐ浸けておきななさい………
暫くすれば
どんなに明るい場所だったとしても…
必ずぐっすり眠れるわ………」
カウンセラーの津葦先生の目が…
姉の目と………
凄く似て居ることに気付いたのは……
この時だった………
津葦先生が急に転勤になった為
もう会えなくなったのだと知ったときは
とても悲しかった……
家には三徳包丁が一本在るだけで
砥石も無かったので……
私の不眠症は
未だに治って居ない………
TO BE COMUGIKO