証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

怖かったあの日のこと

~ 追憶 産業医 津葦キリコ ~

 

 

ローズと初めて会ったのは

 

早朝の24時間スーパーだった……

 

その頃私は

 

夜勤明けにスーパーで

 

無料のアルカリイオン水を汲ませてもらうことが

 

ルーティン化して居て

 

その日もペットボトルを携えて

 

吸水マシーンの前へと向かったのだ………

 

 

早朝からアルカリイオン水を汲みに来る者など

 

私以外滅多に居ないのに……

 

その日は二人も並んで居て

 

軽く舌打ちをした……

 

「あ…ダメっスよ?

 二本入れたら並びなおさないと」

 

声が聞こえたので前を見ると

 

今水を入れている人物のショッピングカートには

 

給水用のペットボトルが四本入って居て

 

どうやら3本目に吸水する為

 

カードを挿入したらしい……

 

このスーパーでは二本以上吸水する場合

 

最後尾へ並びなおすというルールが在ったので

 

私も一緒に文句を言ってやろうかと思ったが…

 

そいつの顔を見て…踏みとどまった……

 

私と同じ会社の

 

構成員だった………

 

 

 

命を落としやすい性格というものがある

 

それは正義感の強い人間だと

 

私は思う…………

 

いくら自分が正しくて相手が悪かったとしても

 

自分を守る為には

 

黙認するという行為が

 

必ず必要なのだ………

 

 

私は下を向いて目を閉じた……

 

「ねえ…

 後ろ並びなおしたほうがいいっスよ?……」

 

私は心の中で思った……

 

そのくらいにしておけ……

 

と……

 

ガツン ガツン

 

 

連続する音が聞こえた……

 

薄目を開けると

 

スーパーの磨かれたフロアタイル

 

赤い飛沫と

 

幾つかの白い粒が転がるのが見えた……

 

かるくため息をついてから

 

顔を上げると…

 

くちを押さえてうずくまって居たのは

 

私が知って居るほうの人物だった…

 

一瞬

 

え?

 

 

思ったが……

 

私の知って居るほうの人物は

 

その後も容赦無く

 

エンジニアブーツで顔面を蹴られ続けて居た……

 

「あ…

 申し訳無いっス

 良かったら先に入れちゃってくださいっス」

 

男かと思って居たその女は

 

意外と礼儀正しくて

 

その両方に

 

すこしずつ驚いた……

 

うずくまって居る人物が懐に手を入れたので

 

「あ」

 

と言って指を差したら

 

女も懐に手を入れた………

 

 

 

幸い店員は一人しか居なかったので

 

ポケットに入って居た諭吉さんを10名ほど渡して

 

「記憶力は良いほう?」

 

と尋ねたら

 

「最近物忘れが酷くて

 鳥頭と呼ばれて居ります」

 

一流ホテルのメートル・ドテルを思わせるような

 

柔らかな笑顔だった……

 

サバイバルナイフが胸に突き刺さった骸を

 

女と一緒に表へ運ぶと…

 

植樹ブースに人が居る……

 

一瞬焦ったが

 

よく見るとさっきの店員が

 

スコップで穴を掘って居た………

 

「もし良かったら

 この穴を埋めておいていただけないでしょうか?

 今から植樹をしようと思うのです

 今初めてお目にかかったばかりなのに恐縮ですが」

 

私達は骸を穴に放り込み

 

土を被せた……

 

店員が苗木を持って来て

 

バケツの水に浸し

 

あぶくが出なくなったところで

 

先程骸を埋めた上に植樹して……

 

「きっとこの樹は

 大きくなって

 美しい花を咲かせるでしょう」

 

そう言って藁でマルチングした後

 

小声で歌いながら店内へ戻って行った…………

 

愛と勇気だけが…………

 

アン●ンマンの主題歌だった…………

 

さっきは何故気が付かなかったのだろう…………

 

私は肉食獣の気まぐれで生かされた兎の気持ちを…

 

理解した………

 

 

職業柄怖いことには慣れて居るはずの私だったが……

 

おしっこが漏れる寸前だった………

 

「あの人一体何者っスか?………」

 

そう言った女は普通に漏らして居た

 

 

 

 

これがローズとの出会いで

 

翌日会社の面接を受けさせた……

 

         TO BE COMUGIKO