証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の在りふれた日常を描いた物語です♡

甘酸っぱいお花の香りのトマトソース?!

~ 追憶 バーテンダー ~

 

 

 

患部を消毒しながら由子が言う………

 

「お前の男に殺されかけたんですけど」

 

「イテテテ……」

 

消毒液が滲みたのだろう……

 

そう言いながら笑う女……

 

縫合後

 

丁度二十四時間が経過して居た………

 

そのとき私は

 

くちを開けて洗面所の鏡で左下の奥歯を見て居た……

 

綺麗にはまって居る……

 

噛み合わせも完璧だ………

 

「由子ありがと」

 

私はそう言って由子を見たのだが

 

由子は女の患部を写真に収めることに相当集中して居るらしく

 

私の声など全く聞こえて居ない様子だった………………………………

 

 

ガトーショコラを買ったのは

 

単に私の好みだったからなのだが…….

 

由子は……

 

「ちゃんとあの女の好み解ってんだね」

 

 

そう言って笑った……………

 

二種類在ったガトーショコラを指差して

 

「どっちが固いですか?」

 

 

パティシエールらしき女に訊いたとき……

 

後ろから由子の笑い声が

 

微かに聞こえた様な気がしたのは気のせいだと思って居たのだが……

 

どうやら気のせいではなかったらしい…………………….

 

 

女のアパートで小さな円テーブル………

 

三人向かい合って

 

今からガトーショコラを食べる…………………

 

由子が八等分にカットした1ピースにフォークを当てた……

 

しっかり固い……

 

私好みのガトーショコラ……………………………………………………

 

由子がくちを開いた………

 

「デザートフォークの端一本だけ太くなってるのは

 こういう固いケーキを切ろうとしたときに

 曲がらないようにする為の補強なんだよ」

 

私はそのことを知って居たが……

 

「へー

 そうなんだ」

 

 

言っておいた………………

 

女と目が合った……

 

ニヤニヤして居た……

 

この女は人の心が読めるのだ……………………

 

女がガトーショコラをくちに運び

 

もぐもぐしながらとても幸せそうな顔をした…………

 

私の表情から察したのだろう……

 

「知らなかった?

 この女

 かなりの甘い物好きだよ?」

 

由子が教えてくれた………

 

女に半分

 

4ピース……

 

由子と私は四分の一の2ピースずつ……

 

でも私はその2ピースのうち1ピースを女のくちに入れてやった………

 

一瞬目を輝かせた由子が

 

すかさず私の真似をする………

 

暫くの間

 

何も喋ることが出来なくなった女だったが……

 

その表情はとても幸せそうだった………………

 

 

私が由子のベッドに居た間

 

女はなんとか学校へ行ったそうだ…………

 

傷が開くのは心配だし

 

歩けば痛みも強かったので

 

本当はアパートで寝て居たかったらしいが………

 

自分がいつも通りに出勤しないことで

 

何か勘ぐられたら困ると思ったのだと言って居た………………

 

美術教師と女子生徒一名が失踪して

 

未ださほど日も経って居ない中…….

 

今度は男子生徒七名が行方不明……………………

 

確かにこの状況下での

 

普段と違う行動は得策で無い……………………

 

生徒や他の教員達

 

そして事情を聞きに来た警察も含め

 

誰一人として女を疑った者は居なかったという…………………

 

因みに私は現在

 

風邪をひいて寝込んで居ることになって居るらしい………………

 

労いと礼のつもりで

 

女のくちに私の分のガトーショコラを

 

もうひとくち分だけ入れてやったら……

 

女はもぐもぐしながら

 

嬉しそうに笑った…………………

 

 

「ねえ由子ぉ……

 私の怪我ってどれくらいで治るの?」

 

由子の手を押さえながら尋ねる女……

 

「えー?そんなに?」

 

由子のくちは塞いで在ったが

 

この女は心が読めるのだ………

 

「んーんー んーんー」 

 

私達は由子の声にならない声を……

 

言葉にならない言葉を……

 

一緒に聞いて居た…………………………

 

ガトーショコラを食べ終わったとき

 

由子がバイトに行くと言い出したのだ…………

 

女が寂しがったのでこうなった………

 

「ねえねえ……

 手ぇ押さえるの代わって」

 

女がそう言うので

 

由子の腕をクロスさせて手首を持ち

 

鼠蹊部で固定しながら…………………………………………………

 

私がそうして居る間

 

女は由子のカメラを手に取り

 

様々な角度から由子の撮影を行って居た……………………

 

女は終始上機嫌だった……

 

由子はずっと

 

「んーんー んーんー」

 

 

言い続けて居た……………………………………

 

「ギャハハハハハハハ」

 

現実世界で

 

そんな笑い方をする人を初めて見た………………………

 

友達にも色々な形が在るのだな…………

 

 

そう思った夜だった………………………………………………………

 

 

         TO BE COMUGIKO

 

 

 

 

「あ~♪♡

 ジャガイモ添えてくれて在る~♡

 嬉しい♡♡♡

 なんかこのソース……………

 とても紅いですねぇ………………

 それに香りもとても華やか……………………………」

 


「このソースはトマトよりも赤ワインが多い配合なんだよ

 だからこんなに紅くて

 香りも華やかなのさ………」

 

「嗚呼………

 甘酸っぱくて美味しい……………

 食べたこと無い味です……………………

 鼻に抜ける香りが………

 まるでお花を食べてるみたい…………………

 ちょっと大変だけど……………

 今夜は最後まで

 跳ねさせないように食べられる気がする…………………………」

 

 

既にけっこう跳ねてるよ?……………………

 

 

このパスタをつくるときは……………

 

渋みの少ないやや甘口で
ライトなタイプの赤ワインを選択して居ります☆