~ 追憶 産業医 津葦キリコ ~
音を立てないようそっと部屋の鍵を開けると
あの客がベッドに横たわって居り
気持ちよさそうに寝息を立てて居た…
さっき送迎の人に言われた通り
トカレフを両手で構えて
絶対に外さぬよう
銃口が密着する寸前まで接近し
引き金に
力を込める…
左膝を打ち抜くと…
どうやら客は目を覚ましてしまったようなので
右膝も打ち抜き
左肩と右肩も
続けて打ち抜いた…
銃口をくちに入れて
「あやまれ」
そう言った……
でも…
そう言っても客は…
何も言わなかった……
仕方が無いので私は
引き金が動かないよう注意して
トカレフのグリップでくちを殴りつけながら
「あやまれ」
と
言い続けた……
客の歯が全て折れて居ることに気付いたのと
時を同じくして
客が眠って居ることにも気付いた私は
一回目にこの部屋を訪れた際
客が私を脅すのに使ったナイフで
客の耳を削ぎ落として目を覚まさせた
バランスが悪いのは可哀想なので
もう片方の耳も削ぎ落としてあげてから
手足に数十箇所の深い刺し傷をつくってやったら
客が涙を流して居たので
やっと反省したのかと思い
私はもう一度
「あやまれ」
と
そう言った……
結局客は
パクパクとくちを動かすだけで
謝らなかった……
時計を見ると
送迎のひとを起こす時間が近づいて居た…
仕方ないので
客の右脇腹に銃口を当て
何回か引き金を引いた…
大きな衝撃が4回
あとはカチンカチンという小さな反応しか無かったので
真っ赤に染まって行くシーツと
客の顔を見てから
ホテルを出た………
車に戻ると送迎のひとはもう起きて居て
なにやらくちをパクパクさせて居る……
私はこの時初めて
自分の耳が
トカレフの発砲音で聞こえなくなって居ることに気付いた………
TO BE COMUGIKO