証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の在りふれた日常を描いた物語です♡

ライバル会社に潜入したら №7

~ 追憶 産業医 津葦キリコ ~

 

 

メガネは赤い部屋の中へ

 

ゆっくりと歩いて行き

 

そこら中に散らばって居る手足や胴体の一部…

 

そして頭部の中からひとつを持ち上げ

 

「これ…組…あっ…

 えっと…

 これ…社長です……………」

 

 

そう言った………………

 

 

部屋の中に散らばった

 

十体分くらいはあるであろう

 

人間のパーツから

 

この部屋で

 

少し前に起こったで在ろう光景を想像する……

 

 

私は

 

自分が今…

 

かなり興奮して居るということに気付いた……

 

 

今日はさっき三時間ほど休憩もしたし

 

さほど疲れて居なかったので

 

メガネにくちづけした

 

 

 

            ********************************

 

 

少し休憩してからメガネと一緒に車内を散歩した……

 

先程の赤い部屋に入る前は

 

急いで居たので

 

あまり気にならなかったが……

 

どの曲がり角を曲がっても

 

目に入る光景は

 

真っ赤な水面に浮ぶ

 

バラバラに切断された人体…………

 

そして真っ赤に染まった

 

壁紙と天井……

 

 

メガネと愉しくお茶をシバいて居た間に

 

他社の訪問でもあったのだろうか?…………

 

 

散歩中

 

扉を見つける度に

 

中を確認するメガネ……

 

結果は…

 

何処も同じようなものだった………

 

 

最後に確認した社長室に一番近い部屋だけはキレイで

 

可愛らしい洋服やぬいぐるみ……

 

おそらく十代……

 

少女の部屋だろう…………

 

 

「ここは組…社……社長のお嬢さんの部屋なんです……」

 

メガネが拾い上げたヘッドフォンからは

 

ヴンヴンとベースの重低音が漏れて居る…………

 

私はコンポのスウィッチをOFFにした…………

 

どうやらこの社内に於いて

 

生存者は……

 

メガネと私の…

 

二人だけらしかった…………

 

 

メガネが少し……

 

困った顔をした……

 

「自分一人だけが生き残りとなると……

 ちょっとまずいことになるんですよね…………」

 

 

二人で社長室に行き

 

金庫を開けた……

 

大人数の諭吉さん達が

 

礼儀正しく整列して居た…………

 

 

勿論束縛は輪ゴム……

 

帯が輪ゴムに交換されて居るのは

 

こういう会社の特徴だった…………

 

 

諭吉さんの身柄を

 

メガネと半分ずつ引き取ることにした……

 

勿論諭吉さん達が可哀想だったからに他ならず

 

他意は全く無いので

 

そこは信じて欲しい……

 

 

私達は唯の善意だけで

 

諭吉さん達を

 

半分ずつ引き取ることにしたのだった…………

 

 

良いことをして気分が上がった瞬間に

 

メガネと目が逢ってしまったので……

 

礼儀として

 

仕方なく……

 

またくちづけした…………………………

 



            ********************************

 

 

今日はたいした仕事などして居ないはずなのに……

 

私はなんだか気怠く

 

謎の疲れを感じて居た…………

 

表へ出ると

 

旨い具合に夜の帳は下りきって

 

全てを墨色に染めて居た………………

 

 

フルスモークのベンツに乗って

 

セルモーターを回すメガネ…………

 

「何処かで遇ったら声かけてね」

 

「ええもちろん」

 

ベタベタの社交辞令を交わしながら

 

なんとなくメガネの舌を噛んだ………………

 

「さようなら」

 

「さようなら」

 

ベンツのエギゾーストノートは小さくて

 

すぐに聞こえなくなった………………

 

 

自社に電話して

 

送迎スタッフに迎えに来てもらった……

 

私はその送迎スタッフの顔を見た瞬間

 

ずっしりとした疲れを感じた……

 

 

トランクを開けてもらった……

 

「キ…キリコさん……

 こ…今夜は絶対に忘れないので……

 あ…安心して……く……ださい…………」

 

「べつに忘れても良いから……

 もしまた忘れたとしても

 殺害しないしデコピンもしない

 軽い気持ちで居て良いよ」

 

 

若い奴はマジ面倒くさい……

 

なんで私が気い遣わなならんのよ…………

 

 

トランクに入って側臥位になる私……

 

バタンという音と振動の後

 

真っ暗なトランクの中で聞くセルモーターの子守歌は

 

今夜も私を迅速に

 

深い眠りへと

 

誘った…………………………………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

 

起きたらすぐにアイス欲しいんだけど……
あの若造にそんな気い効かせられる訳がないんだよね………
コンビニの在庫が切れてませんよーに…………