証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

気を失う前

~ 追憶 東雲坂田鮫 ~

 

 

先生が姿を消した後も

 

私の基本的な生活は

 

それまでと何も変わって居なかった……

 

夜明け前

 

或いは

 

夜が明けてから帰宅する母親を避けて

 

まだ暗い時間に外へ出る日々………

 

でも

 

基本的な生活以外では

 

変わったことも在った………

 

私はあの日

 

先生の部屋を出て以来

 

先生のことを考えない日が無くなった………

 

先生のことを考えて居るとき……

 

無意識に

 

自分の軀を縛って居た…………

 

勿論あのとき先生が優しく私の手に乗せてくれた包帯で…………

 

 

それが

 

今何処に居るかも解らない先生を

 

身近に感じられる気がする

 

唯一の方法だと……

 

知った…………

 

あの日先生がしてくれたみたいに

 

毎日自分でそうした……

 

先生が

 

そうしてくれて居ると……

 

想像しながら………………

 

自分の軀を縛って居る間だけ

 

私は今生きて居るのだという感覚を覚えた………

 

私の生に対する執着は

 

先生への執着に付随するもので

 

最早単独での存在が……

 

難しくなって居た………

 

この頃の私にとって

 

自身の軀を縛るという行為は……

 

自分の命を維持するということと……

 

等価だった…………

 

 

その日も私は

 

母親が帰宅する前に

 

家を出た………

 

母親の帰宅時間はまちまちで

 

玄関や家の前でバッティングしてしまうとサイアクなので

 

注意が必要だったが……

 

幸いこの日は

 

スムーズに出ることが出来た………

 

私は月明かりの下

 

それまでと変わらす

 

学校を目指して歩いて居た…………

 

 

校庭で鉄棒の近くに座るのは

 

以前と変わらなかったが……

 

この頃の私は

 

鉄棒に吊された亡骸を妄想して過ごす……

 

ということは無くなり……

 

代わりに

 

先生を思い出すことで時間を消費して居た………

 

あのとき先生は

 

真っ暗な校庭で

 

女と一緒だった………

 

私が初めて授業以外で先生と関わったあの日のことを……

 

私は毎日

 

反芻して居たのだ…………

 

ただ……

 

その日はいつもと事情が違った…………

 

私は学校に着く前に

 

人の気配を感じて立ち止まった……

 

そして

 

耳を澄ませた…………

 

近くを流れる川のせせらぎや

 

風に揺らされ擦れ合う草木の音……

 

それらにマスキングされては居たが

 

間違い無く

 

そこには人が居た……

 

私は心拍数が急激に上がるのを感じた

 

私は月明かりを頼りに茂みへ分け入り

 

その音がする方向へと進んだ……

 

私の目に

 

二人居る人間のシルエットが映った

 

シーソーは無かったけれど

 

あの時見た光景を

 

鮮明に思い出した…

 

 

私は先生に駆け寄った

 

私の心臓は

 

張り裂けるほどに高鳴って居た

 

涙が流れる寸前だった

 

「先生」

 

 

私はそう言った瞬間

 

 

先生とは異なる顔を認識し

 

それと同時に

 

左側の月明かりが遮られるのを感じた………

 

大きな音と衝撃の後

 

私の意識は

 

満月がつくり出した影に

 

呑み込まれた………………

 

 

              TO BE COMUGIKO