証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の日常を描いた物語です(・∀・)♡

斧と女神と私の仕事 後編

~ 追憶 産業医 津葦キリコ~

 

 

「違う!そうじゃない!!

 早く私の鉄斧を返せっっ!!」

 

私がそう言うと女神は困惑した表情を見せ

 

金や銀の現在の価値や

 

これから更に上昇していくで在ろうと予測される

 

価格についての説明を始めたが

 

私は女神の話を遮り

 

『お片付け』の仕事についての説明を行った……

 

 

しかし女神も全く引き下がらず…

 

今度は

 

金や銀の斧なら装飾品とみなされ

 

銃刀法違反が適用されない可能性が高いということを主張…

 

それに対して私は

 

 

森の中に居るのだから

 

木を切る為に所持して居ると伝えれば

 

鉄の斧でも銃刀法違反は適用されないと反論……

 

その反論に対し

 

女神はすかさず

 

逮捕された場合

 

金や銀の斧は殺傷力の高い鉄の斧より

 

量刑が軽く済むと説明し…………

 

………………

 

お互いの主張は平行線を維持し続ける…………

 

 

かなり長時間の押し問答が続き

 

最終的に私が

 

「理屈なんかどうでもいい!

 私は金の斧も銀の斧も

 絶対に受け取らないっっ!!」

 

 

強い口調で伝えたら……

 

女神が……

 

ハラハラと涙を流し始めた…………

 

急にどうしたのだと私が尋ねると

 

女神は泣きながらボソボソと……

 

話し始める…………

 

 

女神の話を要約すると

 

ブラック企業に勤めて居る上に

 

営業成績も悪い女神は

 

いつも上司から執拗なパワハラやセクハラを受けて居た……

 

もしも今日中に

 

この金の斧と銀の斧を

 

誰かに受け取って貰うことが出来なければ

 

女神は上司に何をされるか解らない…………

 

 

いうものだった……

 

更に続けられた女神の話では

 

本当は上司から何をされるのか……

 

それはもう解りきって居ることらしい…………

 

先週少々ヘタを打った女神が

 

上司にされたことも教えてもらった……

 

 

私の務めて居る会社もブラック企業

 

営業成績の悪い者は

 

同じような目に遭って居た…………

 

私は女神が可哀想になり

 

妥協案を考えることにした……

 



結局私は

 

金の斧と銀の斧を受け取り

 

私が池に落としてしまったものとは違う

 

新しい鉄の斧も貰うことになった……

 

 

私の斧は

 

女神が任務を遂行した証として

 

どうしても会社に提出する必要が在るらしく

 

私が女神から貰った新しい斧は

 

女神がついさっきホームセンターへ赴き

 

自腹で購入して来てくれたものだった………

 

 

別れ際

 

私は女神に言った……

 

「自分が上に立てば

 会社を変えることが出来る

 だからそれまで辛抱して頑張ろう」

 

と…………

 

 

女神は微笑んで

 

池の底へ沈んで行った………

 

あの女神が上に立つ日など

 

永遠に訪れないことは解って居た……

 

たぶん女神自身もそう思って居ただろう…………

 

でも……

 

でもこれは…夢なのだ…………

 

ただの夢……

 

ただ私が観ているだけの

 

夢なのだ…………

 

 

いい加減目覚めたかったが

 

全くその気配が無かったので

 

一旦自宅に金の斧と銀の斧を置きに行ってから

 

女神に買って貰った新しい鉄の斧を持って

 

『お片付け』の仕事に向かった…………

 

 

 

女神が買ってくれた斧は

 

 

良く切れた……

 

 

夢なので当然なのかも知れないが

 

何のトラブルも無く

 

ササッと8人殺害し

 

 

帰宅後ワインを呑みながら食事して

 

録画して在った映画を一本観てから布団に入った……

 

私は

 

夢の中で布団に入り……

 

夢の中で寝ようとして居た………

 

中々にして意味の解らない夢だが

 

まあ良いか……

 

と思って目を閉じた……………………

 

 

 

あれから何年が経過したろうか…………

 

あの女神の言った通り金と銀の価格は上昇を続け

 

ついでに量刑も

 

あの頃より厳しくなった……

 

余談では在るが

 

殺人の時効も廃止された……

 

あの女神は

 

今でも同じ会社で働いて居るのだろうか…………

 

 

そんなことを考えながら

 

今日も壁に立てかけられたままになって居る

 

金の斧と銀の斧を見て

 

 

まだまだ売り時では無いな……

 

 

そう思った夜だった……………………

 

             

              TO BE COMUGIKO

 

負けるなよ~