証券会社で働いて居ます

証券会社で働くOL達の在りふれた日常を描いた物語です♡

わたしがBARに通う理由は・・・ 参

 

わたしは……

 

空腹と疲労で………

 

 

意識が朦朧として居た…………

 

 

死霊と綿飴の区別も

 

ギリギリつくか……

 

つかないか……………………

 

………………………………

 

そんな………

 

そんな状態だった………………………

 

 

「おなかがすいた」

 

 

そう言ったわたしの腰に

 

アイツは……

 

 

優しく手を回して…………

 

歩き出した……………………

 

初対面なのに

 

距離感の近過ぎるヤツだ…………

 

 

 

そう思ったが……

 

この時私は

 

立って居るのもしんどい……

 

というか

 

いつ倒れても不思議では無いような状態だったので……

 

むしろ助かった……

 

 

自分の軀を地につけないよう

 

仕方なく

 

アイツに抱きつくような形で

 

なんとか歩を進めた……………

 

歩きながら……

 

耳やくちびる

 

時には立ち止まって…………

 

他の部位も…………

 

噛んだり触れられたり…………

 

……………………………

 

でもこの時のわたしは

 

あまり気にならなかった……

 

 

このとき

 

わたしの意識は

 

殆ど結界の外に向けられて居たからだ……………………

 

 

…………………………

 

結界を張って……

 

いや……

 

張ることが出来て……

 

本当に良かった……

 

わたしの右手に入れた刺青で

 

退散出来ない時点で

 

かなり強力な怨霊だと解っては居たが…………

 

……………………………

 

あいつら……

 

尋常じゃ無い…………………

 

 

偶然通りかかった通行人達が……

 

まるで

 

縁日の水風船を握りつぶしたみたいに

 

…………………………

 

……………………弾けてゆく……………………

 

…………………………

 

月明かりに照らされるその瞬間は

 

まるで打ち上げ損ない

 

地表で広がってしまった花火…………

 

…………………………

 

それにより地表に形成された物体は

 

熟れ過ぎた無花果

 

子供が投げて遊んだかのようでもある……………………

 

……………………………………

 

わたしは……

 

北斗の拳という

 

今では恐らく

 

コンプライアンス的に

 

地上波での放送が不可能であろう

 

スプラッターなアニメを……

 

思い出して居た…………………………

 

 

わたしはアイツに抱きつくようにして

 

何とか自分が地面に抱かれてしまうということを………

 

回避して居た……………………

 

 

疲労困憊だった……

 

だから……

 

だからこのときのわたしには……

 

結界の外で起こって居る花火を……

 

唯々見て居ることだけしか……

 

出来なかった…………

 

 

北斗の拳にいつも出て来る

 

ザコキャラの声優が演じ上げる

 

あの高音の台詞が

 

頭の中で

 

リフレインされて居た……………………

 

 

わたしはアイツを……

 

抱きしめて居た……

 

必死に……

 

必死に抱きしめて居た…………

 

他意は無い……

 

最早殆ど力の入らない

 

鉛のように重い身体を……

 

何とか地面から離れたところで

 

維持する為だけに……

 

唯々純粋に……

 

抱きしめて居た…………………

 

 

…………………………

 

ふと目を開けると……

 

 

アイツは……

 

 

シャッターの鍵穴に

 

鍵束の中から一本選んだ鍵を刺し入れて回し……

 

胸ぐらいまでシャッターを上げたところで

 

わたしをかがませて……

 

 

潜らせるようにして…………

 

中に……

 

入れた……………………………………

 

 

              TO BE COMUGIKO

 

 

中はナチュラルなウッドテイストのBARで……
バックバーには
オールドヴィンテージのボトルが沢山並べられ……
馥郁と漂うウイスキーの香りが…
わたしの軀と心を
このBARの調度品の一部に……
変えてしまおうとして居るように思えた…………