~ レストランで 酒森百合絵と東雲坂田鮫アネモネ藤子 ~
暫くして東雲坂田鮫さんが戻って来た…………………
何故か口紅がとれて居り………………………
着衣の乱れも在ったが………………
私の人生には
おそらく全く関係の無いことだと思ったので
気にしないことにした………………………
東雲坂田鮫さんと同じものにした……………………
スーシェフが運んできてくれた・・・・・・・・・・・
昼真ティーニ・・・・・・・・・・・
最高で在る……………………………
魅惑の昼間ティーニは
受け取った瞬間
三くちで呑み干した・・・・・・・・・・
勿論ちゃんと味わって
手抜き無しの三くち呑み・・・・・・
ショートカクテルは
サーヴィスされた瞬間が一番旨い・・・
そしてそれだけで無く
最高に旨い状態で
すぐに呑むのが
つくり手に対する礼儀だとも・・・
私は心得て居る・・・・・・・・・・・・・・・
このマティーニは
ドライなチャーチルスタイルだったが・・・・・・・・
このマティーニには・・・・・・
強烈な切れ味の中に・・・
どこか・・・
そう・・・
優しさだ・・・・・・・・・
どこか優しさのようなものを感じた・・・・・・・・・・・・・・・
銀の弾丸という異名に恥じぬ
硬派な・・・
言うなれば・・・・・・・・・・・
『殺す』マティーニ・・・・・・・・・・・・・・・・
ドライ・ヴェルモットは
未開封で
カウンター横に置いて在るだけという
スーパー・チャーチルスタイル・・・・・・・・・・・・
勿論最高に旨いが・・・・・・・
今呑んだマティーニは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カクテルグラスを持ち上げ・・・
スーシェフに問う・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「このマティーニは君が?」
「はい」
と・・・・・・・・
少しはにかみながら・・・・・・・・・
その上で誇らしげな笑顔で・・・
そう答えたスーシェフ・・・・・・・・・・・・・・・・・
ふと気付くと・・・・・・・
くちや頬・・・・・
首などに・・・
顔料のようなものが付着して居ることに気付いた・・・・・・・・・・・・
その顔料のようなものの色が・・・・・・・・・・・・・
今日東雲坂田鮫さんがつけて居た口紅の色と・・・
全く同じに見えたが・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私の人生には
おそらく全く関係の無いことだと思ったので
気にしないことにした………………………
話をマティーニに戻そう・・・
スーシェフのつくったマティーニに感じた優しさは・・・・・・・
スーシェフ自身の優しさが
溶け込んだものに違いなかった・・・・・・・・・
たとえ同じ素材・・・
おなじ道具・・・
おなじ方法でカクテルをつくったとしても・・・・・・
それが
おなじものになることは絶対に無い・・・・・・・・・
カクテルというのは
つくり手の個性が
如実に現れるものなのだ・・・・・・・・・・・・
それはマティーニのような
シンプルなカクテルで在れば・・・・・
より顕著に表れる・・・・・・・・・・
このスーシェフの・・・・・・・
どこか『優しさの感じられる』マティーニ・・・・・・・・・・
甲乙付けがたく・・・
どちらも最高に旨い・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
くちを近づけたとき・・・・・・
一瞬微かに・・・
ヴェルモットの香りを感じた・・・・・・・・・・・・・・・・・
それを今・・・
思い出した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
チャーチルスタイルにも・・・
ヴェルモットを視界に入るギリギリの場所に置いたり・・・
執事に「ベルモット」と唱えさせたり・・・
様々な方法が知られて居るが・・・・・・・・・・・・・・・
執事の呼気を用いたといわれる
トラディショナルな手法のツイストで在ることを・・・・・・・・・・
私は今・・・・・・・・・
確信した・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東雲坂田鮫さんが・・・・・・・・
くちを開いた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「スーシェフさん・・・・・・・・・・
わたし・・・・・・
もう少しだけ・・・
ヴェルモットの香りが欲しいのだけれど・・・・・・・・・・・・・
もう少しだけ追加していただくことって・・・・・・
出来るかしら・・・・・・・・・・」
「もちろんでございます」
と・・・
スーシェフ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ヴェルモットのボトルから
ゾンビグラスにに注がれた液体が・・・・・・
スーシェフの口内へと流れ込む・・・・・・・・・・・
ゾンビグラスの底面から
クリスタルガラスと
流れ行くヴェルモット越しに見た
普段は隠されて居る内朱の色に・・・・・・・・・・・・・・・・・・
目眩のするような・・・
色気を感じた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
TO BE COMUGIKO
東雲坂田鮫さんのグラスに手を伸ばすスーシェフ・・・・・・・・・・
艶やかな唇から注がれる
気化されたヴェルモット・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
と・・・
思って居たら
何故かスーシェフは・・・
東雲坂田鮫さんが
あえてひとくち残し・・・
もう少しだけヴェルモットの香りを・・・・・
と・・・
そう言って居たマティーニを・・・・・・・・・・・・
先程のヴェルモット同様に・・・・・・・・
自分の口内へと流し込んでしまった・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
※『いつも理科室に居た彼女』は休憩して・・・
先に『意外と普通のレストラン?』を掻き揚げることにしました