~ 追憶 東雲坂田鮫 ~
「ねえ……
藤子…………」
「はい?」
「初めての時のことって覚えてる?」
「ああ……
は…い……
覚えて……ます………」
「どんなだった?……」
「ああ……
えっと………
あまり……
良い思い出では無い…
ですね…………
唯々怖かったし…………
嫌でした…………」
「あ…
ごめん……
思い出したくないやつだったらいいよ……」
「あ…いえ……
大丈夫です…………
棕櫚さんに尋ねられたことには
全て答えたいので…………
…………
あの夜……
母親の客が家に来て…………
その人も母親も……
酷く酔って居ました…………
二人で…
いきなり私の部屋に入ってきて…………
それで……
それで私…母親に命令されたんですよ…………
服を脱げ…………
って…………
それで…私……
本当に嫌だったけれど
私……
その頃母親に逆らうって概念を……
持って居なかったから…………
…………しかたなく…………
………………
一応どんなふうにするとか……
知識はあったから……
余計に……怖くて………
実物を見たら……
想像以上に……
グロテスクだったし………
………………」
「………
その時母親って何してたの?……」
「終わったら呼んでって……
その客に言って……
外…歩いてくるって…………」
「ああ……」
「その後は……もう…………
言われるがまま……
って感じで………
兎に角早く終わらせたいって…
それしか…考えてなかったです…………
……思ったより………
血が…出ちゃって……
なんか……
それが凄く恥ずかしかったのも……
覚えてます…………」
「そっか………」
「でも……
終わってみたら
ああ…なんだこんなもんか……
って……
べつにこれくらいのことで
私は何も変わらない……
大したこと無いって…………
…………
それからは……
けっこう頻繁に……
そういうこと……
させられましたね…………
相手は毎回違って……
客が…母親にお金……
渡してたのも…見てました…………」
「そうなんだ…………
…………
私の時は……
そこまで嫌じゃなかったけれど……
でも…
終わった後の罪悪感っていうか………
そっちのほうが酷かったかな…………」
「ああ……解ります…………
私も……
こんな…こんな簡単に……
していいことじゃないって…………
毎晩……
毎晩…思ってました…………」
「初めて殺ったのって
何だった?」
「カンパチです
お客さんが釣って来たばかりの天然物で
血抜きもしてなかったし
私も魚捌くのなんて初めてで
当然下手だったので
かなり出血しちゃったんです…………」
TO BE COMUGIKO